私は這いつくばったままその場から動けなくなった。




「何してるの!?早く逃げて!!」




そう叫ぶシンの声が聞こえたが、完全に腰が抜けて動けないのだ。




弓を引こうにも腕が震えて身体が言うことを聞かない。




マーマンの大きく開かれた口がこちらに向かって来るさまを見て私が思ったのは…




─“絶体絶命”




両目をギュッと閉じて身を強張らせ、最期の瞬間を覚悟した。




ふと…目の前を暖かい風が舞い、私は片目をあける。




その一瞬はまるでスローモーションのようだった。




私の前に立ちはだかる広い背中が見え…




長いレイピアが煌めき…




気味の悪い雄叫びを上げてマーマンが空中で灰になった。




陽の光に乱反射した灰をバックに彼は振り向き、レイピアを腰の納めると私を振り返った。