耳元でキリキリと軋む弦の音が不思議と自分の集中力を高める。




そして姿の見えない敵の気配を完全に察知している自分に気付く。




“2…いや、3体…”




どうか強い敵じゃありませんようにと祈りながら相手の出方を待つ。




次の瞬間飛び出してきたのはオオカミのような獣だった。




明らかにオオカミと違うのは頭が二つある所だが、そのオオカミに向かって私は躊躇なく矢を放った。




「ギャンッ…!」と短く呻くような鳴き声を上げて倒れた獣の後ろからもう一匹飛び出して来た。




咄嗟に身を翻して回避すると、間髪入れずに矢筒に手を伸ばしもう一矢放つ。




我ながら鮮やかな弓捌きだった。




“あと1体…!”




だがその気配は先程の気配とは違う。




「フウカ…気をつけて!“魔術師(マジシャン)”だ…!」




シンの言葉と同時に私が放った矢はその敵によって弾かれた。




正確には何か“壁”みたいなものに当たったような感じだった。




「魔術師に物理攻撃はあんま効き目ないよ!」




「えっ!?…先に言ってよ!」




そう呟きながら魔術師が操る炎をヒラリとかわす。