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私にとって“彼”失う事は痛手だった。



驚異的な記憶能力と人の心を持った彼は、私の研究には不可欠だったからだ。



過去のデータから、機械では処理出来ない部分が存在するのは解っていた。



それが人の心だ。




私が彼を知ったのは大学の後輩から「知人の患者に“サヴァン症候群”の子がいる」と聞かされたからだ。




知的障害がありながら人並み外れた記憶能力を持つサヴァン(賢人)。



その論文は目にした事はあったが、実際に会うのは初めてだった。



本当に彼は素晴らしかった。



15歳でありながら知能は4歳児並。



だがその記憶能力は未知数だった。



私は彼の記憶力がどうしても欲しかった。



だから彼の両親に接近し、「息子さんの能力を最大限に活かしたら」と持ち掛けた。




彼等はとても迷っていたが、最終的に首を縦に振ってくれた。