私がその事件を担当するきっかけになったのは今から2ヶ月程前だった。




頻発するネット犯罪のせいで当時少年課の刑事だった私は異動を余儀なくされた。




警察のコマである私はそんな身勝手な人事に拒否する権利はない。




どんなに理不尽だと思える事に対しても異論を唱えてはいけない。




それが社会に順応する術である事を私はこの20年で学んだ。




…所詮ヒラはヒラだ。




キャリア組のエリート達と違い、私には出世街道なんてものは存在しないのだ。




だから仕事もそんなに必死になる必要もない。




周りの刑事も私と大差無いだろう。




躍起になっているのは新卒の若造くらいだった。




私が少年課の自分のデスクを片付けていると、同僚の池さんに「よぉ」と肩を叩かれた。