「そうそう、この鏡見て分かりましたよ」
奏は袖から冊子を取り出した。
若干一名顔色をがらっと変えた者がいた。
「これ、あなたのだったんですねぇ………土方さん。“梅の花一輪咲いても梅は梅”。いい句ですねぇ。……ぷっ」
奏は土方に差出しながら顔をそらした。
肩が小刻みに震えている。
「んなことこれっぽっちも思ってねぇだろ」
「いやぁ、これくらいは思ってますよ??」
奏はくっついているかいないか分からないくらいに指と指を近付けた。
もう指と指というより、爪と爪だ。
「奏、記憶を取り戻してようがなかろうが関係ねぇ。………ちょっと表へ出やがれぇっ!!」
「やーだね」
奏を追いかけ回す土方、逃げ回りながら見たみんなの顔はどれも清々しい笑顔だった。
…………まぁ、珠樹を除いて。



