「この鏡はただの鏡ではなくて呪物なんです」
「じゅぶつ??」
奏は持っていた鏡をゆっくりと畳に置いた。
「えぇ。特別にレオン様からお借りしてきました。この鏡は映し出した者が体験した過去を見せる鏡です」
「なるほど。それで自分で“思い出してはいない”けど鏡を通して“知った”ってことだね??」
山南が納得したように頷いた。
近藤も、ふむ、とあごをさすった。
「まぁ、体験した過去ってことは意識がはっきりあった時のしか駄目なんで、肝心の最近のがまるで映らないんですけどね」
「そりゃあ残念だな!!」
「近藤さん、まったく残念そうに聞こえませんよ」
奏は苦笑いをこぼした。
ニカッと笑う近藤に先程まで見ていた映像が重なる。
やっぱり、これが私の過去なんだなぁ。
なんか、不思議な感じがする。
言葉使いもこんな丁寧なの使ってたなんて。
………でも、この笑顔。
安心するなぁ。
ちょっとだけ、ちょっとだけ、記憶を失う前の私の気持ちが分かったかも。



