誠-巡る時、幕末の鐘-




―――市中




今のこの状況は何だ??


私はここに記憶を取り戻すために来て、あわよくば澪ちゃんと帰るつもりだったんだが。


私の両側で火花を散らしている男達は誰だ??


知らない。


とくに左の男。


人間だろ??


何だ、この背後にまとう暗黒の気配は。




「ちょっと。奏に近すぎ」


「えぇ〜??これくらい何にもないよ。肩を組んだり腰を抱いたりしてるわけじゃあるまいし」


「あんた………今すぐ帰れば??」


「うっわ〜。何??その冷めた視線。奏ちゃんにそっくりってところが小憎たらしいね」




あれか??


伝令がまだ来てないうちから考えていたとはいえ、澪ちゃんを連れて帰ろうと思ったのがいけなかったのか??


あそこではなくて爺の所に世話になろうと思っていたのがいけなかったのか??


思っちゃいけなかったのか。


………………知らなかった。