誠-巡る時、幕末の鐘-




「なんだ??その企んだ表情は」


「何でもないよ??」


「うん。気のせいだと思うよ??」




こういう時の結束力は固い。


いつもは何かあるごとに刀を抜くくせに。




「…………ここの責任者は??」


「近藤さんだ」


「今はいない…か。その次は??」


「俺か、山南さんだ」


「うん。偉そうだもんな。山南さんっていうのはどこにいる??」


「おい。今の微妙な言葉の言い方。お前、何か含みがあっただろ」


「ない。事実だ事実。……寒くなってきたな」




奏は外を見た。


雪が降ってきている。




「降ってきたか」


「あぁ。……ちょっと出かけてくる」


「僕も行くよ」


「あんたは留守番だよ、沖田。僕が奏と一緒に行くんだ」


「面倒くせぇな。二人共ついていきゃあ、いいじゃねぇか」


「…………後で覚えとけ」




不用な助け船を二人に出した原田を、奏はにっこりと笑顔で低く脅した。


それに頬を引きつらせる原田。


原田には悪いが、この屯所の見慣れた風景が戻ってきた。


それを道場からこっそりとこちらを見ていた隊士達も、幹部達の様子を笑顔で見ていた。