「だが、何とかして思い出そうと思ってここに来た。澪ちゃんもいるしな」
奏は辺りを見回したが、澪ちゃんが屯所にいる気配はない。
「澪ちゃんは??」
「澪ちゃんなら近藤さんと一緒に出かけたよ」
「そうか。………盗み聞きとは感心しないな」
「申し訳ありません。元老院の伝令です」
みんなが庭の方へ視線を移すと、そこには黒衣をまとった男が膝を折っていた。
山崎が観察方として任務にあたる時の服装によく似ている。
「それで??」
「元老院の閣議により、雷焔奏は、日本の京都、新撰組預かりとする。……とのことです」
「は??」
「本当か!?」
「はい。それでは私はこれで失礼します」
男はすっと姿を跡形もなく消した。
奏は渋面を作っていたが、土方達はほっと一安心していた。
何がなんでも思い出してもらわなければ、こちらも困る。
奏は大切な仲間なのだ。
この十日間それがよく身に染みて分かった。



