―――貴船、山荘




「…………」




奏は運ばれてきた灯籠の火をじっと見つめていた。


何もすることがないのだ。


下手に動いて相手を刺激しても、今の自分では何もできない。




………みんな心配してるかなぁ??


響のご飯、食べたいなぁ。




灯籠と共に運ばれてきた食事には一切手をつけていない。


灯籠の光に映し出される物憂げな表情の奏の姿はひどく幻想的なものであった。




「………帰りたい。みんなの所に」


「それは残念ながら叶わぬ願いですね」




扉が開けられ、忠興が入ってきた。


奏はそちらを見ようともしなかった。




「お食べにならないんですか??」


「必要ない」




ぴしゃりと言い返した。


忠興は肩をすくめ、やれやれと言わんばかりだ。


奏にはその様子がひどく気に障った。