「身分も低いし、金もない。困ったもんだ」
「自分から憎まれ役を引き受けたんですね??わざとみんなから嫌われるようなことをして」
芹沢はフッと笑った。
「そんな大層なもんじゃない。俺はただ、この壬生浪士組を残したかったんだよ。俺達が作ったこの、な」
最後は自嘲気味に言った。
「芹沢さん…あなたは本当はいい人ですね」
「いいや??俺はいい人なんかじゃないだろ」
「いいえ。私は知っていますよ」
奏は嘘偽りのない言葉と共に、今度こそ笑顔を見せた。
「八木家の娘さんが亡くなった時も近藤さんと二人、帳場にずっと立って進んで手伝ってましたよね??」
「それは当たり前のことで…」
芹沢が奏の言葉をさえぎった。
「面白い絵を書いてくれたと、子供達は喜んでいましたよ!!栄太だって、千早だって!!」
とうとう奏は声を荒げた。
「隊士達が八木家の家具で刀の試し切りをしていた時も、あなたは自分がやったと言っていた!!違いますか!?」
「……驚いた。そんなことまで知っていたのか」
芹沢は小さな目を丸くした後、肩をすくめた。



