「ふ〜ん」
「これはどうするつもりだ?」
斎藤が菓子の残骸を指差した。
「……捨てれない。私には…」
たとえ食べられない位になったとしても、これは主である紫苑が作ったものだ。
ローゼンクロイツ・天宮に仕える奏に、おいそれと捨てられる訳がなかった。
「雷焔君がそのように慕っているならば、本当の事を伝えればいいんじゃないかい?」
「……そうですね」
困り果てていた奏に、井上が救いの手を差し伸べた。
奏もそれに頷いた。
紫苑様はお優しいから、ちゃんと伝えれば大丈夫よね。
「どこへ行くんだ?」
スタスタとどこかへ行く奏に永倉が声をかけた。
「門」
『門?』
不思議に思いつつも、黙って見ていることにした。
「おい!!鷹!!」
「はいはい、ここにいるぜっと。主従揃って人使いの荒い」
一人の男が背中に黒い翼を背負い、門の外から返事をした。
不幸な運命をも背負う鴉天狗の鷹だ。
何が不幸かといえばもうご存知の通り。
扱われ方のぞんざいさだ。



