誠-巡る時、幕末の鐘-




『…すまない』


「声が小さい。その程度しか旗本のくせに出せないのか?」




旗本だろうと農民だろうと商人だろうと関係ないだろう。


だが、奏に普通の一般常識が通じるはずがない。


一般常識を侮(アナド)ることなかれ。


どんな学問よりも大事だ。




『すまない!!』




三人は屈辱に顔を歪ませながらも頭を下げた。


土方達はそっちも気になる。


だが、青年の機嫌の様子はもっと気になる。


板挟み状態に陥っていた。




「……おい。まだか?」




終わらない応酬に痺(シビ)れを切らしたのか、とうとう青年が口を挟んだ。


その顔は不機嫌そのものだ。




「あ、はい。もう終わります。ミリアルド様」


「面倒を起こすな。面倒事はミエや叔父達だけで十分だ」


「気を付けます」




青年は本当にそう思っているのだろう。


ミリアルドと呼ばれた青年の顔には疲労感が漂っていた。


奏もあえて言いたいことは言わず、当たり障りない言葉を言うのに止めた。