「美味いのなんのって!!…それをあの男は」




奏は心底恨みのこもった目でまだ沖田と試合をしている男を睨んだ。




「そういえば、まだやってんのか?あの二人」




奏程ではないが、人間では沖田も剣の天才と謳(ウタ)われる男だ。


その沖田が本当に武士といえるのか怪しい程の男相手に、こうも時間がかかる訳がない。




「放っておきましょう。沖田さんがすぐ許すはずないじゃないですか。しかも強かったらまだしも弱いくせに…ねぇ」




奏の言葉通り、沖田は笑っていた………口元だけは。




「はぁ〜」


「溜め息つくと幸せが逃げていくそうですよ」




土方が頭が痛くなるのを溜め息で誤魔化そうとした。


すると同じく沖田と同じくらい頭痛の種である奏が言った。


……土方の額に青筋が浮かんだのは、決して気のせいではない。