「ここに何の用だ。…爺、よせ」


「ですがっ!!」




視界の端で爺が刀を抜くのを見つけ、素早く諫(イサ)めた。




別に他意はない。


ここでいざこざが激しくなれば、土方達にも被害が及ぶ。


ただそれだけだ。




「お前に会いに来た」


「……会いに?何故?」




連れていくだの、鬼の居場所はここではないだの言っている紫翠が?


絶対に裏がある。




奏は警戒を強め、刀を握りなおした。




「お前に会いに来るのに理由がいるのか?」




紫翠は本当に分からないといった風に言葉を返した。




「いる。風戸の当主ともあろうものが側近とこんな所で何の茶番劇をうっている?」


「それは先程こいつが言った通りだ」




紫翠は鈴を顎で指した。




「紫翠がこいつらが奏に構ってもらってるのを見て妬いたからだろ?」


「うるさい」




は?


何言ってんだ?


長く生き過ぎて、とうとう頭おかしくなったか。


妬く?


誰が誰にか聞こえんな。




奏はそこだけ意図的に聞こえないふりをした。