「マジで帰れ」
「何で同じ学校より、ほかの学校の子教えるの?!」
それでも亜美は、執拗に俺の腕を掴んでくる。
「なんでよ! 何で私には教えてくれないの?! ねぇアキラ!」
「うぜぇよ」
「ヤダヤダヤダ――――ッ! 教えてくれるまで帰らないもん!」
「絶対に教えねぇ」
「アキラ!」
「いい加減にしろよ、お前。しつこいんだよ。俺はな……お前みたいな自分勝手な女は大っ嫌いだっ! うぜぇ帰れ!」
ここまで言えば、絶対に帰るだろ。つか、早く帰ってくれ、頼む。
「もういい! アキラなんか絶交だかんね!」
ようやく諦めたのか、木下は足を踏み鳴らしてコートを出ていった。木下が、ふいに誰かの横を通り過ぎた。
「あ、アキラ! 来たのか、早く来いよ!」
そう言ったなりに、帰ったはずの木下が、振り向く。そして、アキラに向かってガン飛ばしやがった。
「あんたも大っ嫌い!」
「はぁ?」
あのやろう! マジでムカつく!
俺はすぐさまアキラに走り寄った。
「ああ、アイツの事、気にすんなよ」
アキラが俺を見て「あ、ああ……でも」と、心配そうに木下の背中を見つめている。
「いいから、始めっぞ」
「……うん」
なんか、元気なくねぇか? アキラ……どうしたんだ。
それでも、俺は練習を始めた。アキラの態度がやけに気になる。それに、なんとなく今日は乗り気じゃないみたいだ。
なんでだよ、アキラ……あ、だんだん腹立ってきた。もしかして木下に言われた事、気にしてんじゃねぇだろうな。
くそ、木下のせいで、俺まで苛立ってきた。アイツが来たせいで……。
「おいっ! お前、やる気あんのかよ」
あ、やべ、怒鳴っちまった。でも、アキラは不貞腐れた態度を変えようとしない。
「お前、今日、おかしいぞ?」
もしかして、体調でも悪いのか。
「熱でもあんのか?」
俺は心配になって、アキラの額に手を宛がった。アキラになんかあったら、俺、ヤダからな。
「……んな……」
「は?」
今、なんて言った?

