「で、どうなの?親がいないって事?」


−いや、いる事はいる。


「じゃ何で……」


−元々父親ってのがいない家庭でアイツは育った。そんで母親が働いて父親代わり。


−アイツが小学校に入る前までは婆ちゃんが母親代わりをしてたんだけど、それも死んじまってから母親は随分変わったみたいでな。


「………………」


−ケンタには姉が一人居る。そいつだけを自分の元に置いて、小学校に入ると同時にケンタの事は施設に放り投げたらしい。


「何よそれ……」


−自分一人でチビ二人育てんのが大変な上に、ケンタは身体があれだからな。まぁ、賢明な判断だと思うよ。そんなヤツの元にいたら、今頃母親が殺人犯でケンタは被害者だな。


「それはそうだけど……お母さんは会いたいとか思わないのかな……」


−あぁ、それから一度も会いに来てないらしい。


「そんな……自分の子でしょ?何でケンタ君ばっかり辛い想いするの?!」


−あんな小せぇのにな。俺、アイツの辛さ、少しだけ解る気がするんだ。俺の両親もずっと音楽浸けで、殆ど相手してもらった事ないし。


−だから、俺がいつかアイツの親代わりをしてやりたい。親代わりが無理でも、ずっとそばにいてやりてぇ。


「……そう。やっぱりハルトは人の痛みが解る人なんだね……」


突っ張っててもハルトは人を思いやれる優しい人……。ずっと体温を感じて来た私には解るよ。


これを切り出したら、どうなるか怖いけど……やっぱりハルトには進むべき道を進んで欲しい。


ケンタ君を支えてあげるんなら、尚の事……。