それからしばらく、俺は何があったのか理解すら出来ずに、ある種死人として日々を過ごした。


そうなると月日が経つのもあっという間で、初七日、四十九日も過ぎ、いつの間にか三ヶ月余りが経過していた。


が、何故だろう。婚約者であり、あれ程愛していたジュカを無くしても、一切涙は出なかった。


やっぱり俺は冷たい奴なんだな。


ブゥゥーン…ブゥゥーン…


携帯のバイブが鳴っている…リョウタだ。


「おうハルト、飲みに行こう」


「…あぁ」


珍しいな。酒も飲めないのに飲みに誘うなんて。


俺達は近場の飲み屋で待ち合わせる事にした。


「おうハルト。中に入ろう!しかし、もう冬だってのに、すげー雨だな」


言われるままに中へ入り、俺は生ビールを、酒弱なリョウタはカシスオレンジを頼んだ。


「ハルト…やっぱりあれから目が死んでるな…」


「?…いつからだよ」


「いつからって…まぁ、しょうがねーか。飲もう!なっ!」


何を言ってんだコイツは…さっぱり解らん。


それから一時間程経った頃だろうか…


「いやぁ…俺、酒弱いけど、ウマイ!ウマイなぁ!…ん?ハルト、電話か?」


「あぁ、なんか携帯見てると、そのうちジュカから掛かってきそうな気がしてな……」


「ハルト……」


「こうして酒飲んでると余計声が聞きたくなる」


そう言って、電話帳でジュカの番号を捜すと、通話ボタンを押した。


「ハルトお前……何やってんだよ……」


「…………」


「そろそろ受け入れてやんないと、ジュカも成仏出来ないぞ?」


「……てめぇに何が解るんだよ……何にもわかんねぇくせによ!」


「お前……目ェ覚ましてやる!」


そう、俺は言葉としての"死"は理解できていたのだが、心では受け入れていなかった。俺の心はあの時、ジュカの命と心中したんだ。


ゴンッ!!!


それがリョウタの一撃で受け入れる事となり、俺のからっぽになった胸の器に溢れ出す。


「う……うぁぁぁぁ……ジュカァ……ジュカぁ!……うぅっ……うぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」