「…我は、もともと、死ぬはずではなかった。」
唐突に、黒猫――いや、克が話し出す。
楓は頷いて先を促した。
「縄から落ちたと言うても、我なら体制を立て直し、着地することもできたからの。……しかし、」
楓は息を飲み、克は息を吸った。
「発作…だ。我は、心臓が弱かった。落ちている途中で発作が起こっての。……そのまま。」
「……で?どうして猫に…。」
「言ったろう。我は、死ぬはずではなかったと。……世を司る者の過ちだった。」
つまりは、克はあの時死ぬはずではなく、世を司る者――――、つまりは神と呼ばれる者のミスで死んだ。
そう言いたいらしい。
「だからの、人間として死んでしもうては生き返れない。じゃあ他の生き物にしてくれと我は頼んだ。」
――そして、猫になった。



