しかし、楓の目に移ったのは、夜の闇と、それと同じ色の毛並みの



「黒猫…さ、ん…?」


金色の瞳を輝かせる黒猫だった。


この黒猫から、克の声が発せられたのか、と戸惑う楓。



黒猫はしなやかな動きで楓の目の前まで来て、ちょこんと座り、口を開く。



「いかにも、我が楓の父親――克だ。」


特徴的な喋り方。
それはまさしく父親の喋り方で。



「な、…で。」


なんで、と言いたいのに、声がかすれる。

父親は、もう亡くなったはず。

楓の目の前で、縄から落ちて。


それなのに今、猫の姿で目の前にいる。