楓は子供ながらに、父親の凄さを理解していた。


楓も、彼の演技に魅了された一人。


楓の母親は、既に他界しており、父親が唯一の肉親。

つまりは、克の努力を一番近くで見ており、人間離れの才能とはこういうものか、と楓は知った。




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(だから私は……。)


――自分を天才とは思わない。



うっすらと開けた視界。

目は開いているはずだが、あたりはもう暗い。

どうやらもう夜のようだ。



キョロキョロと周りを見ると、蝋燭の灯りが視界に入った。