楓は、ふいに
今、自分を抱きしめている存在がひどく愛しく思えた。
土方の背中に腕を回す。
「はい。生きて、息をして、動いて、ここにいます。」
「…あぁ。」
「いま、ここにいて、アナタを抱きしめてます。」
「…あぁ、そうだな。」
「アナタを抱きしめていて、アナタに抱きしめられてます。」
「あぁ。」
良かった、と
土方は呟いて、
それから、楓の耳元に口を寄せて、告げる。
「―――好きだ、楓。お前が、好きだ。」
土方は楓の体を離して、顔を見る。
「―――え?」
その瞳からは、涙が一筋流れていた。
楓は涙をそのままに、土方に問いかける。
「今、好きって。」
「あぁ、好きだ。」
「……本当に、本当ですか?」
「おぅ。」
楓はボタボタと涙をこぼす。
そして
「私――私も、好きです。」



