「それから、十二年経って―――…、楓は“天才”と呼ばれる軽業師になった。」
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若干十七歳にして、明らかに他人にはない才能を開花させた楓。
世間ではもてはやされた。
公演でも、トリじゃった。
それほどに楓の軽業は魅せることに長けておった。
だから
「あ、あの…。」
「なに?用があるなら早く言って。あんまり話したくないんだから。……なんでアンタみたいなのがトリなのよ。」
「…あ、や、やっぱりいいです…。」
仲間には疎まれておった。
仲間のもとに居場所はなかった。
こういうとき
猫の姿が嫌じゃった。
人間だったときだったら
“安心せい”
“我がおる”
そう言って抱きしめて
弱い娘を守ることができたのに。



