―――未練など、あるに決まっておった。
まだ楓は五歳。
守る、と決めとったのに。
「おとーさん!」
まだ舌の回らない口で我を呼ぶ幼く愛しい娘を
どうして残して逝けようか。
加恵、加恵。
――――――…楓。
我はまだ守れてない
まだ、死ねない
『生きたいか』
ふいに聞こえた、
声というより、音。
――生きたいか
生きたいに決まっとる。
『人の姿では生き返れん』
それでも
あの子を
妻の形見を
我が見守ってやりたい
『――では、そなたの生に神の加護を』
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「そして生き返った。そして…楓を陰で見守っていたんじゃ。」
克の話に
皆は黙る。
娘を想う気持ちは
父親の執念とは凄いものだ、と。



