土方は自信満々に笑い
「俺が何の証拠もなしに呼び出すわけねえだろ?」
と、言った。
鬼一は怪訝そうに眉尻を上げる。
「証拠?」
「証拠とは言い難いかも知れんが…、噂っつーのは、誰かの口から誰かへ伝えられるもんだ。」
土方は腕を組む。
「じゃあ話は簡単だ。お前以外の隊士全員に、誰から噂を聞いたのかを尋ねたらな、…最終的にはお前に繋がったぜ?」
そう言って挑発的に鬼一に微笑みかける。
鬼一は下唇を噛む。
噂が流れた道を逆走して根元を探ること。
これが土方が言っていた犯人を見つける簡単な方法だ。
「…でも、なんで俺が柴田に都合の悪い噂を流さなきゃいけないんですか。」
食い下がるように言う鬼一に、
「楓をそちら側に引き入れたかったから…じゃろ?反幕府の間者は、お主じゃからの。」
思いもしなかったことを言ったのは、克だった。
「…え?鬼一さんが間者?」
今まで黙って成り行きを見ていた楓だが、今度は話に入る。



