(ほほほ惚れたって…、掘れたとか彫れたとかじゃなくて!?ああでも土方さんに彫れたとか意味分かんないし……)


混乱のせいか、楓は克の小さな体を揺する。

ガックンガックンと揺れる克は、黒い体毛で覆われているため分かりにくいが顔色が悪い。


「お…ぇっ…、か、楓……。」

「あぁあ、惚れたって…。」

「っ、う……ゆ、するで…ない…。」


言わなければ良かったと後悔しながら揺さぶられる克に、救いの手が…。


――ガラッ


「何、…やってんだ、楓?」


襖を開けて、入ってきたのは、お膳を持った土方だった。


「楓、なんか親父さんがグッタリしてるぞ。」

「あ、ごめんお父さん!」


ようやく解放してもらえた克は、畳の上でグデーッと横になった。


「何があったんだ?」

「それが…」


言おうとしたが、思いとどまって止める。


(私が土方さんに惚れてるのかって聞かれました、とか言えない!)