―――違う。


「怖くなんか、ないです。」

「じゃあ何故聞いた?拷問などをしたのが副長ではなければいいと、そい思ったからだろ?」

「それは…っ!……確かに、そうですけど…。でも、」


楓は歩みをとめて、目を閉じる。

頭を撫でてくれた土方や、泣くために胸を貸してくれた土方や、微笑む土方、なぜか不機嫌だったときの土方などを思い返す。

―――確かに、一瞬戸惑った。

―――そんなこと、土方さんはしないって思いたかった。


楓は目を開けて、鬼一を見る。


「でも、新撰組にいて、刀を振るう限り、人を殺めることは避けては通れません。実際、私だって人を殺しました。」


それに、拷問だって、きっと誰かがやらないといけないこと。

土方はきっと…、他の人にさせたくはなかった。

人を追い詰め、追い詰め、どんな手段を使っても白状させる。
それは辛い仕事だから。


だから、土方がしたのだ。


(優しすぎるんです。本当に……。でも、だからこそ、)


「怖くなんかありません。嫌いにも、なりません。私だって人殺しですけど、あの人は受け入れてくれました。……私が受け入れなくて、どうするんですか。」


楓は
真っ直ぐとした目で
きっぱりとそう言った。