楓に人を斬らせたこと。
その経緯を。
『今にも泣きそうな…そんな表情でしたから。僕があんなことを言わなかったら、あんなに…。目の前で息絶えられると、自分が殺したと、よく分かってしまいますから。』
―――僕が悪かったんでしょうか?
とどめを刺せと言ったコイツが悪いか、と聞かれたら、俺は言える。
『間違ってねぇ。悪くもねぇよ。』
『…。』
『お前は、組長として当たり前のことを言ったんだ。いざという時にとどめを刺せないで、剣客になるのは無理ってもんだ。』
『…、はい。』
『間違ってんのは…悪いのは、………時代としか言いようがねぇよ。』
だからこそ、
俺たちは、時代の流れに逆らってんだ。
***
あの夜、俺は楓のところに行ってやれなかった。
いや、行けなかったんだ。
俺が楓を隊士にしたから、俺が悪いと考えていたんだが……
『全部を背負わないでください。私のせいにしてもいいんです。』
……強いよな、女は。



