当たらない天気予報

なのに、雅樹さんは雅樹さんらしくないことに、「うん」としか言わなかった。
久しぶりに雅樹さんを間近で見るけれど、友達が言うように、雅樹さんはかっこいいなと改めて気付く。


「…どうしたんですか?」


珍しく覇気のない雅樹さんにあたしから尋ねたら、数秒の間があって、


「俺な、皐月ちゃんとな、付き合って欲しいねん」


いつもみたいな声量じゃない、小さな声。
だけど一字一句逃さず聞き取れた、はっきりした声。


「…あ、迷惑やったらはっきり言ってや!そしたら俺、もう皐月ちゃんに付き纏うようなマネ、せぇへんから!」



弱気な雅樹さんは、雅樹さんらしくない。
あたしの知ってる雅樹さんは、いつだって笑顔だ。
だけど、相当勇気振り絞ってるのが雅樹さんの表情から読み取れた。



迷惑だと思ってたら、先輩だからって最初からまともに相手してないよ?ねぇ、雅樹さん。



あたしは何の躊躇いもなく、「こちらこそ、宜しくお願いします」と答えた。
その時の雅樹さんの嬉しそうな間抜けな顔は、いつ思い出してもすっごく笑える。






きっとね、あたしも雅樹さんに嵌まっちゃったんだよ。
だって気付けば、雅樹さんのペースに巻き込まれちゃってるんだもん。