「“先輩”って言われんの、なんか嫌や。せめて“雅樹さん”とかって呼んでやー」。
雅樹先輩がそう言うから、あたしは先輩のことを“雅樹さん”と呼ぶことにした。
なんか…あたし、彼のペースに飲まれてる?




あたしが玄関で雅樹さんに声をかけられた話は、どこでどう見られてたのか、翌日には友人らにバレてた。
「皐月がかっこいい3年に告られてた」って。
確かに雅樹さんはかっこいいけど、微妙に誤報じゃん、告られてはないもん。
でも、「ファンです」ってのも告白に入るのかな?
でもでも、「付き合って下さい」とも言われてない。
…って友人の可奈子(かなこ)に言ったら、


「バカ、付き合ってなくても、そう申し出てくるまで秒読みだっつーの」


って返された。








雅樹さんのメールを返すのは、不思議と億劫じゃなかった。
雅樹さん自身のことを教えてくれると同時に、雅樹さんはあたしのことも聞きたがるから。
単純に、話が上手い人なんだと思う。ちっとも退屈しないもん。
3日に1度の割合で、雅樹さんとは玄関で会った。これってかなりの頻度じゃない?