当たらない天気予報

校舎の渡り廊下からグラウンドに出る戸口の段差に、二人で並んで腰掛けた。
こんな薄暗い中で男二人でアイス食べてる光景は、よく考えてみたらかなり滑稽。
だけど、こんな時間にこんなところ、誰も来ない。野球部でさえも。
袋をがさがさと開け、湊は俺にアイスを手渡した。


「やっぱり俺、チョコミントにすれば良かった」

「なんで?」

「バニラは一紀から半分貰えばいいから」

「馬鹿じゃん」


えへへ、と柔らかく笑う湊。
それにつられて、俺もへらりと笑ってアイスの蓋を開けた。
日が沈んだ後でも、まだじめじめと蒸し暑いこんな気候で、バニラアイスが癒えるように体内で甘く溶ける。
ふと隣に目をやれば、にこにこと嬉しそうにアイスを頬張る湊の横顔。
黙々とアイスを食べるのに耐え切れず、俺は口を開いた。
ただの友達だった期間も含めて、湊とはもうかれこれ1年以上も一緒にいるのに、それでも沈黙は慣れない。


「…そう言えば湊、また髪染めただろ」

「あ、分かる?昨日自分でやってみたんだ」


熱心にアイスを掬っては口に運んでいた湊が、俺の声で漸く顔を上げた。


「また山下に喧しく言われるってば」


山下とは、湊のクラスの担任の名前。
湊が多少髪の毛を明るくしても、小言だけで済ませてくれる気のいい初老の男性教諭だ。
尤も、湊のクラスは湊以上にやんちゃな格好をした奴らが多いから、山下ももう