「一紀、このまま帰る?」

「どうしよっか?部活も早く終わったし…」


俺が質問に質問で返すと、湊は待ってましたという顔で、


「じゃあさ、アイス食べに行こうよ!」


俺に飛びつかんばかりの勢いで、提案してきた。
なんとなく、湊が俺に寄り道を提案するだろうということは想像できていた。
クラスが違う上、放課後は毎日さっさと部活に行ってしまう俺と、帰宅部で用事が無ければ本来は真っすぐ帰る湊が一緒にいられる時間は、案外少ない。
湊が俺を駅まで送ってくれる間の寄り道が、俺達の基本的な放課後デートの仕方。
だから湊にとっては、その寄り道の行き先がアイスだろうがファーストフードだろうが買い物だろうが、何処だって何だっていいんだ。
アイスだと提案したのは、大方暑い中練習に励んだ俺に気を遣ってのことだろう。


「ああ、いいね」

「やった!俺、チャリ取って来る!」


そう言うやいなや、湊は駆け足で駐輪場へ向かっていった。
家と学校が近い湊と違って、電車で通う俺は駅まで徒歩。
こんな無邪気な男子高校生、なかなかのレアモノだよなあ―――そんなことを思いながら、湊の後ろ姿をゆっくり歩いて追いかけた。




学校を出てすぐのコンビニは、俺達高校生の馴染みの店。
昼飯を買ったり、休み時間の合間をぬってこっそりお菓子を買ったり、帰宅前に立ち寄ったり。