「ま、知る必要はねぇ」


そう言って立ち上がるタクヤの腕を引っ張り見上げる。


「何それ。気になんじゃん」

「気にしとけば」


意地悪く笑って、冷たく言い放ったタクヤは短くなったタバコを空き缶の中に入れ足を進ませる。

その所為で必然的に離れてしまったタクヤの腕。


「ちょっと、タクヤ!!」


駆けつけるあたしにタクヤはあたしを見下げ、


「お前、マジで男でも作る気だった?」


“クラブで”

付け加えられた言葉に一瞬息が止まりそうだった。


そんなの知ってるのってカケルくんしか居ないじゃん!!

あぁ、そっか。さっきの事ってカケルくんの事か…。まぁ、軽そうだもんなー…


えぇっ、つか野外って…


「明日美、聞いてんの?」

「えっ?」


ハッとするあたしにタクヤは眉を顰める。


「だからマジで男探ししてたのかよ」

「え、違うよ。ただあれは友達の付き合いで…」

「ふーん…付き合いね。ま、明日美に男出来たら一発ソイツ殴っちゃうけど」

「何言ってんの?駄目だよ。そんな事したら」

「ま、しねーけど。だからそーなる前に俺にしとけって」


そう言って口角を上げたタクヤはあたしの額をツンと軽く人差し指で押し、背を向けて歩いて行く。


そのタクヤの背後を見て思わず笑みが零れ落ちた。




【END】