走って帰ろうか。なんて思ったけど絶対無理。

家までまだ少し距離はあるし、こんなので帰ったらずぶ濡れだ。


それは避けたい。


綺麗に整えた髪だって念入りにした化粧だって全てが台無しになっちゃう。


「どうしょう…」


零れ落ちた言葉とため息。


「…明日美…ちゃん?」


不意に聞こえてきた声にあたしは気にしていた濡れた制服から視線をあげる。


「あっ、」


上げた瞬間、あたしは目の前に居る人物から目が離せなくなった。

綺麗な顔立ちをした…あたしが羨ましいって思ってたリオさんが目の前に居る。


その隣には以前リオさんと一緒に居た軽そうな男。

確か、カケルって人。


カケルくんはリオさんを濡れないようにと傘を差す。


「明日美ちゃんだよね?」


確かめる様に聞いてくるリオさんに軽く頷く。


「そうですけど…」

「あっ、前に一度タクヤと居る時に出会った事のあるリオです」

「覚えてます」


覚えてると言うか、ずーっと前から顔も名前もしってますって感じだ。