「……関係あるよ」
少し間があって、広瀬君の声がまた入ってきた。声のトーンが低い。それだけのことでぶわ、と何かが溢れそうになる。「関係ないよ」「あるって」「ねーっつの！」「あるっつってんだろ岡部バカ！」「そんな名前じゃないから！」「じゃあ改名しろ！」「ふざけんなよ！」小声で言い合うことなんて今更だし、どうでもよかった……わけじゃないけど、いつもの言い合いは笑いながらだから、こうやって２人共真剣な表情での言い合いだと、なぜか無性に、ああ、もう、好きって言ってしまった方が楽なのかな、なんて思ってしまう。だって、苦しい。このままだと私は彼が好きな子を見つめる視線を、瞳を、顔を、見てしまうことになるかもしれない。それが嫌だから、早とちりでこんな言葉が出てしまったのかもしれない。
「……だって、広瀬君は私のこと好きじゃない」
