あたしの左眼には特殊能力があった。

魔物の気配を感知できるのだ。

これは世間から「呪われたモノ」と呼ばれる、半端な存在のあたしにしか備わっていないものだ。

しかしサラと遭遇した時には、まるでゾンビが現れた時のように何も感知できなかった。

だが奴はゾンビやスケルトン・キラーのような傀儡などではない。もしそれらであるのなら、双眸の瞳に光を感じることがないはずだ。

あれは完全に気配を殺していた。

がしかし、果たしてそのようなことが可能なのだろうか。

あたしは奴の気配を探っていたのだが、特殊能力のある左眼でさえも感知できなかった。

上位クラスの魔物は数が少なく、遭遇すること自体稀な種族ではあるが、例え奴らといえども命ある限り「生気」を完全に消すことは有り得ない。

自分の能力異常かとも思ったのだが、左眼も通常通り感知しているから、原因はそれではないだろう。



「雨激天圧(レーゲ・フティ・シオン)!」

「雷風烈破(フード・ヴァン・デスト)!」

近くでは術文を唱える声と、地響きなどが聞こえてきた。何処かのパーティが戦っているらしい。