これは吟遊詩人などの芸術士がよく使う、支援系の術だ。

吟遊詩人の場合、補助術といえば敵味方問わず、唄の聞こえる範囲内のものであれば――クラスなどの制約は抜きに考えて――誰にでも効果が及ぶ。

しかしこの支援系だけは対象者一人にしか効力がないという、特殊な技なのだ。

恐らく自身の体内エネルギーを他者に分け与えるという、他には例を見ない能力が関係しているのかもしれないが、私はその仕組みについて詳しくは知らない。

エドは私に言われるまでもなく、事前に支援系の術を唄い始めていた。

唄い始めた時にその系統の術だということは、私にも瞬時に分かった。何故ならこの状況で芸術士が使う技といえば、それ以外考えられないからだ。

しかしレグは強化されたシールドに阻まれていても、絶え間ない攻撃を繰り出してきている。私たちはそれに押され、じりじりと後退していった。

エドも後ろから私を支えているが、この男の力押しは半端ではなかった。二人がかりでどうにか耐えているほどだ。

だが私の消耗も激しい。体力と精神力が大量に削られていくのである。

私はこれほどまでに短時間で消耗するような激しい戦い方を、今まで経験したことがなかった。このままいけばこちらが不利になるだろう。

「エリスさん〜、耐えて下さい〜」

いつもの気の抜けるようなエドの声で、私は本当に気が抜けてしまった。

「! しま…っ」

気付いた時にはもう遅かった。

鈍く銀色に光る先端が、直ぐ目の前にまで迫ってきていたのだ。