しかし不愉快なことに、彼はまだ私の前から立ち去ってはくれそうにない。


「…思っていたよりも手強いね」

そう呟き、私に顔を寄せてくる。

次の瞬間――。



「…本気で馬鹿なのか、貴様は」

「そう思っているのなら、それでも構わないよ」


汚らわしいものが触れた唇をごっしごっし擦りながら、私は眉をひそめる。

本気でわからない、こいつのことが。