自分にそんな正義心なんてなかった。 ドラマのように素早く助けに行く気持ちにもなりがたかったし、すんなり帰ろうと思った。 「助けて…やめてくださっ…!!」 「黙れよ。ははははっ…」 だけど。 俺は香のような人間が憧れだった。 香ならどうするだろう、と考えて あいつが路地裏を走り込んで、女を助けに行く想像が容易にできた。 じゃあ 俺もそうするまでだ。