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私は言葉が出なかった。

私だって、自分が恥ずかしいよ。努力する前から無理って決め付けて、努力するしたってやるだけ後悔するって決め付けて。

蝉の一生懸命の生き様を聞いて、自分の不甲斐なさ、弱さが恥ずかしい。


「そっからは、とにかく基礎練習をしたよ。それに「どうせやっても上手くいかなくて傷つく」じゃなくて、「傷ついたっていいや」って思うようになった。

だって、一生懸命やって、上手くいかなかったらショックだけど「後悔」はしないだろ?」

そう言った黒田君の目は、いつもの黒田君らしからぬ真剣な目だった。


私は今まで、すっと、どうせ努力したって黒田君は振り向いてくれない。やったってショックを受けるだけ。なら、初めから努力なんかしない。
そう思ってた。


でもね、黒田君のその話を聞いて、黒田君のその目を見て、私は思ったんだ。
このまま何もせずにいたら、絶対、

「後悔する」

って。


ーーその後悔をずっとしていくよりは、玉砕してもいいから、傷ついてもいいから、とにかく頑張ってみたい。