暖かい……?

 俺は動きを止めた。

『優……っ』

 そうか、駿が俺にくっついてるから暖かいのか。

「…………」

 俺は今、戦っていた。
 俺を支配しようとする悪い心と。

 やめろ!!
 俺は、悪い心に支配されない!!
 それでも入ってこようとする悪い心。

 人の悪い心とは、こんな強いものだったのか……。

 駄目だ……意識を保たなくては。

 今駿が居なければ、俺はもう悪い心に支配されて死んでいただろう。

 負けちゃ駄目だ、駄目だ、駄目だ……!!

「はぁ……っ」

 やばい、精神的に疲れてきた。

 足で体を支えきれず、床に倒れた。

 くそ……悪い心、出ていけ!!
 俺の心から出ていけ!!!

「く…………」

 俺は目を細めた。
 すると床に落ちているあるものを見つけた。

 あれは――

「母さん……」

 ――母さんの、銀のブレスレットだった。

 そうだ……母さんの為にも、俺は負けられない。
 生きるんだ、未来を。
 これからを。
 こんな所で負けちゃいけない。

「っりゃあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!!」