僕は後ろに下がり、刃を脇腹から抜き出した。

「――っ!!」

 痛い、痛い痛い痛い!!

 あまりの痛みに、ふらりとよろけた。

 その隙をこっくりさんは見逃さなかった。
 刃が僕の頭目がけて飛ぶ。

「やばっ――」


 ガキイイィン!!!

「へ…………?」

 刃は当たらなかった。
 目の前には、

「お兄ちゃん……」

 強く、逞しく見える後ろ姿。

『大……丈夫……?』

 お兄ちゃんはかなり息を切らして言った。

「うん、でも――」

 お兄ちゃんは大丈夫なの、と言おうとしたが、言う前にお兄ちゃんが振り向いた。

『僕は大丈夫だから、これ持って優のところ行ってて!!』

 そう言ってお兄ちゃんは分厚い本を僕に渡した。
 表紙がとても固い。

 そうか。
 お兄ちゃんはこの本で今の刃を防いだんだ。

 納得したはいいけど。

「なんで……お兄ちゃんは……?」

『いいから早く行け!! すぐ行くから!』

 僕はお兄ちゃんに気迫に圧倒され、本を持って部屋を出た。

 『すぐ行くから』
 その言葉を信じて。