『……部屋から出て』

 チイラが言った。

「――――は?」

『さっき北の窓を閉めたから、こっくりさんはこの部屋から出れない』

 見ると、確かに閉まっていた。
 いつの間に……。

『ここは僕がどうにかするから、お兄ちゃんと逃げて』

 え…………。
 でもチイラは……。

 俺の表情を読み取ってチイラは言った。

『僕は大丈夫。大体貴方が居ても足手まといだから』

 ス、ストレートに言いやがって……。

『優、行こう』

 黙っていた優が俺を支えながら立った。
 俺はそのまま駿に身を任せた。

『知依……頼んだよ』

 駿は一言そう言って、部屋を出た。
 俺も駿と一緒に部屋を出た。

 あぁ……駿も、心配なんだろうな。
 妹の事が。


 俺と駿はリビングに入った。
 そして駿は俺をソファーに寝かせた。
 肩はずきずき痛むし、まだ少し血が出る。
 意識がだんだん遠退いていく気がした。

「……はぁ……は……っあ……」

『優……』

 駿が口を開く。
 俺は遠退く意識の中、駿を見た。

「馬鹿かお前……何泣いてんだよ」

『ごめん……』

「いつ……ものマイペースぶりはどこ行ったんだよ……」

 お前らしくねぇぞ……?

 そう言って、俺は意識を手放した。

 最後に駿が、

『ありがと』

 って言った気がした。