『でさーぶつかった!! って思ったら全身に痛みが走って……』

「知依」

『それで意識失って、気付いたらこうなってて――』

「知依!」

 僕は声を張り上げた。

『……何、お兄ちゃん?』

 知依は話を止め、僕を見た。

「僕はなんで知依がここに居るのかって聞いたんだけど」

『だから今説明してたじゃん』

 いや、そうじゃなくて……。

『僕にも分かんないもん、まぁいいじゃんお兄ちゃんと居れるし』

「知依……♪」

 正直……メチャクチャ嬉しかった。

『でも僕の姿ってママやパパには見えないんだよね……』

「…………」

 僕は返す言葉が無く、黙ってしまった。

『まっ! とりあえずこれからお兄ちゃんの部屋で暮らすから』

「えぇっ!?」

『別にいいでしょ?』

「僕のプライバシーは?」

『そんなのないでしょ? っていうか家族内にプライバシーは無いよ』

 う……確かにそうだけどー。

『お兄ちゃん……これ……』

 知依はいつの間にか僕のベッドの下から何かを取り出していた。

「あぁーっ!! 駄目! 見ちゃ駄目!!!」

 僕は慌ててそれを隠す。

『…………エロ本』

「ちっ、違うもん!!」

 僕のプライバシーがぁ……。