『交通事故ですって』
『まあ、まだ小さかったのに』
『本当、可哀相に……』

 知依の葬式に集まった親戚達は、適当な慰めの言葉を並べる。
 僕はそんな偽りの言葉を聞いていたくなかったので、こっそり外に出た。
 葬式場を出ると、太陽が僕を照らした。

「……眩しい」

 今の僕には、照りつける太陽は眩しすぎた。

『ごめんね……知依』

 もう少し早く起きていたら
 もう少し朝食を早く食べてたら
 知依と一緒に家を出ていたら……。

 一筋の涙が頬を伝った。

「泣いてばかりだなぁ……」

 こんなんじゃ、知依に馬鹿にされちゃうな。


『そうだよ、お兄ちゃん泣くしか出来ないの?』

「!?!?」

 僕は辺りを見回した。

「知依!? 知依なのか!!!」

『うるさいお兄ちゃん』

 この冷たい言葉も、知依そのものだ……。

「……!!」

 僕の目の前に、知依が現れた。
 前と変わらない知依の姿がそこにあった。

「ち……知依…………?」

 もう見れないと思っていた、知依の瞳。

『見れば分かるでしょ、知依だよ。お兄ちゃん』

「知依!!」

 僕は知依に駆け寄った。
そして知依を抱きしめ――

 スッ

 ――られない。

「え……」

『お兄ちゃん、私は死んでるんだよ、触れられないよ』

 そう言った知依の瞳は、少し悲しそうだった。