俺は閉じかけていた瞼を再び開いた。

 俺を呼んだのは誰だ?

 チイラか?
 母さんか?
 こっくりさんか?

『優ってば、まだ寝る時間じゃないよっ! 起きて起きて!!』

 ……いや、どれでも無い。

「駿……!?」

 なんでここに!?

『家の鍵開きっぱなしだったよ〜? 無用心だなぁ』

 俺の心を読んだかのように駿は言った。

『とりあえずこっくりさんには帰ってもらおうかっ!』

「は……?」

 駿はパソコンの前まで行き、マウスをとった。

『こっくりさん、こっくりさん。有難うございました。北の窓からお帰りください』

 鳥居にあったカーソルはゆっくり移動した。

 俺も画面を凝視する。


 カーソルは、【いいえ】を指してとまった。


『あ〜、やっぱりそう簡単には帰らないかぁ』

 駿はあっさりと言う。
 こんな事態も全て予測していたかのように。

 すると、【いいえ】を指していたカーソルがまた動きだした。


   【し】

          【ね】


 その時、駿の背後から“何か”が伸びてきた。

 …………手だ。

 しかしそれはとても赤黒く、ツンとした匂いがして、手とは言い難い見た目だった。

 その手が駿の首に……

「駿!!!!」