開演を知らせるブザーが鳴り、客席の照明が落ちる。

「俺、絶対寝るわー」

薄暗い照明の中で、彼が眠そうに目を擦る。

「んー、まぁ寝ててもいいけど」

元々、演劇なんて無縁な人だもんね。

それに、隣に居てくれるだけで幸せですから。

肩もぴったりくっついちゃってるし、なんかもう、それだけで満足。


狭い座席に感謝です。


緞帳があがって、舞台が始まる。

電車の落とし物センターに届けられた落とし物をめぐって、いろんなひとが登場する、そんな話。



あたしが真面目に見てると、膝の上のあたしのリュックが動いた。

見ると、どうやら彼の膝にそれが少し乗っかっていたらしく、彼が膝で突いていた。

なるほど、邪魔ってことですね。

「はいはい」

小声で言って、自分の方に荷物を戻す。
ついでにぺしっ、と彼の膝をたたく。

そのまま彼の膝に手を置く。

彼、特にノーリアクション。

…嫌じゃないってことでいいんだよね?


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