「そうか?」
「うん。なんというか、男らしい手? 骨骨しいというか強張っているというか、ちょっと羨ましい」
ギュッと手を握ると、その感覚が伝わって来る。
骨が出て皮膚が厚くて、男らしい掌。
俺がどんなに努力したって、手に入れることが出来ない男の手。
「俺、女みたいな手だろ? 細いし無駄に柔らかいし、なんか憧れる」
竜司くんにあって、俺にはない。
無い物ねだりなんて無意味なだけだ。
どんなに足掻いた所で、俺が女であることは変わりない。男の身体を手に入れることなんて叶わない。
そんなのずっと昔に割り切っているはずなのに、こうして手で触れると未練がましくなってしまう。
馬鹿だなほんと。本当に馬鹿だ俺って。


