スピカが問題を起こすことはないと思うけど、例えばスピカが病気か何かで倒れた時。


力の弱いマスターじゃ大きなスピカを病院に運ぶことが出来ないし、犬嫌いで触ることが出来ない竜司くんじゃ、戸惑いが生まれて迅速に対処できない。


マスターのためにも、それになによりスピカのためにも、ここは竜司くんに犬嫌いを克服してもらわなければ。


「というわけで、特訓だ竜司くん!」


「あの、一応確認してもいいですか? 俺に拒否権は……」


「オーナー命令です」


すかさずマスターが口を挟む。


トドメの一撃にスピカが吠え、竜司くんの犬嫌い克服計画は可決された。


「俺の意思は尊重されないのかぁぁぁ!」


竜司くんの虚しい叫びが、店内に木霊するのだった。