納得できるけど、あの時の俺は納得なんてできなかった。


そりゃあ目撃した瞬間は頭の中で真っ白になって“浮気”という二文字が脳裏に浮かんだけど、千秋の普段通りの表情にその単語はすぐに消えた。


でもすぐに、胸の内側からムカムカとドス黒い感情が込み上げてきて、腕の血管が浮き出るほど掌を強く握りしめていた。


なんで襲われかけてんのに平気な顔してんだよ。


なんでそう簡単に身体を触れさせてんだよ。


なんで俺以外の男とじゃれ合ってんだよ。


……情けねえ。


男の嫉妬とか性質が悪すぎ。ダサすぎだろバーカ。


しかも千秋に問いただす勇気もなくて、最悪の回答が返って来ることに怯えて、いそいそと逃げ出した俺は真性のヘタレだ。


こんなんじゃ浮気されても文句言えねえよ。俺が女だったら、こんなヘタレとは付き合えねえし。


悩んでも答えなんて出てこない。